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保守の補習時間

「夫婦別姓ができなくても違憲ではない」最高裁判決が認めた「夫婦/親子同姓」の合理性

 
 「夫婦別姓ができないのは憲法違反」と訴えた裁判の、最高裁判決を見てみましょう。
 
夫婦同姓は、「氏の変更を強制されない自由」を不当に侵害し,憲法13条に違反しているのか?
氏に,名と同様に個人の呼称としての意義があるものの,名とは切り離された存在として,夫婦及びその間の未婚の子や養親子が同一の氏を称するとすることにより,社会の構成要素である家族の呼称としての意義があるとの理解を示しているものといえる。そして,家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位であるから,このように個人の呼称の一部である氏をその個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性があるといえる。

 と、同一の氏を名乗る合理性を認め

氏が,親子関係など一定の身分関係を反映し,婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることがあり得ることは,その性質上予定されているといえる。

と、憲法13条に違反するものではないとしています。

 

❷結婚に伴って改姓することは「強制」なのか

婚姻という身分関係の変動を自らの意思で選択することに伴って夫婦の一方が氏を改めるという場面であって,自らの意思に関わりなく氏を改めることが強制されるというものではない。

として、結婚における改姓は「強制ではない」としています。

 

96%以上の夫婦において夫の氏を選択するという性差別を発生させ,ほとんど女性のみに不利益を負わせる効果を有する規定であるから,憲法14条1項(法の下の平等)に違反するのか?

本件規定は,夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。

と、夫婦のどちらが改姓するかは、夫婦間の協議に委ねられている、として、性差別/不平等を否定しています。

 

❹夫婦同氏規定は、結婚の自由を侵害しているか?

仮に,婚姻及び家族に関する法制度の内容に意に沿わないところがあることを理由として婚姻をしないことを選択した者がいるとしても,これをもって,直ちに上記法制度を定めた法律が婚姻をすることについて憲法24条1項の趣旨に沿わない制約を課したものと評価することはできない。

「夫婦同氏規定が気に食わない」としても、結婚の自由を侵害していない、としています。

 

❺判決は夫婦同氏の合理性を認めている

夫婦が同一の氏を称することは,上記の家族という一つの集団を構成する一員であることを,対外的に公示し,識別する機能を有している。特に,婚姻の重要な効果として夫婦間の子が夫婦の共同親権に服する嫡出子となるということがあるところ,嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があると考えられる。また,家族を構成する個人が,同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できるところである。さらに,夫婦同氏制の下においては,子の立場として,いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすいといえる。

夫婦別姓推進派がやっきになって否定する「同姓であることの夫婦や親子の絆」については、家族を構成する個人が,同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義…と認めています。

 

❻親子同氏の意義

さらに,夫婦同氏制の下においては,子の立場として,いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすいといえる。

として、夫婦別姓では失ってしまう「親子同氏」が子供の利益、と認めています。

 

❼改姓によって主に女性に生じる不利益について

夫婦同氏制は,婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく,近時,婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ,上記の不利益は,このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである。

対外的に旧姓を使うことは自由だし、社会でも広まって、不利益は緩和されつつある、としています。

 

❽選択的夫婦別姓制度について

規制の程度の小さい氏に係る制度(例えば,夫婦別氏を希望する者にこれを可能とするいわゆる選択的夫婦別氏制)を採る余地がある点についての指摘をする部分があるところ,上記(1)の判断は,そのような制度に合理性がないと断ずるものではない。上記のとおり,夫婦同氏制の採用については,嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく,この点の状況に関する判断を含め,この種の制度の在り方は,国会で論ぜられ,判断されるべき事柄にほかならないというべきである。

氏に関わる制度は、国会で論じて判断すべきとしています。どういう制度が良いかは「よく議論して判断」すべきで、夫婦別姓論者が言うような、「夫婦同氏は人権侵害だから早く法改正しろ!」ということではありません。

本件規定を改廃する立法措置をとらない立法不作為は,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。

 

❾三名の女性裁判官はこの判決に反対したのか?

裁判官山浦善樹の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

この裁判は、「15人の裁判官のうち、女性裁判官3人が全員反対した」と伝えられているケースもありますが、本当にそうなのでしょうか?

 

裁判官寺田逸郎の補足意見

婚姻夫婦のように形の上では2人の間の関係であっても,家族制度の一部として構成され,身近な第三者ばかりでなく広く社会に効果を及ぼすことがあるものとして位置付けられることがむしろ一般的である。

(中略)

婚姻と結び付いた嫡出子の地位を認めることは,必然的といえないとしても,歴史的にみても社会学的にみても不合理とは断じ難く,憲法24条との整合性に欠けることもない。そして,夫婦の氏に関する規定は,まさに夫婦それぞれと等しく同じ氏を称するほどのつながりを持った存在として嫡出子が意義づけられていること(790条1項)を反映していると考えられる

(中略)

このように,法律上の婚姻としての効力の核心部分とすらいえる効果が,まさに社会的広がりを持つものであり,それ故に,法律婚は型にはまったものとならざるを得ないのである。

(中略)

選択肢を設けないことが不合理かどうかについては,制度全体との整合性や現実的妥当性を考慮した上で選択肢が定まることなしには的確な判断をすることは望めないところ,現行制度の嫡出子との結び付きを前提としつつ,氏を異にする夫婦関係をどのように構成するのかには議論の幅を残すことを避けられそうもない。

(中略)

離婚における婚氏続称の仕組み(民法767条2項)を例に挙げて身分関係の変動に伴って氏を変えない選択肢が現行法に設けられているとの指摘もみられるが,離婚後の氏の合理的な在り方について国会で議論が行われ,その結果,新たに選択肢を加えるこの仕組みが法改正によって設けられたという,その実現までの経緯を見落してはなるまい。

寺田逸郎裁判官は、結婚制度について当事者夫婦だけでなく広範に、また現状をよく踏まえて考えるように、と諭しているようです。

 

裁判官岡部喜代子の意見

私は,本件上告を棄却すべきであるとする多数意見の結論には賛成するが,本件規定が憲法に違反するものではないとする説示には同調することができないので,その点に関して意見を述べることとしたい。

上告棄却には賛成。

国家賠償は否定。

憲法24条には違反。女性の生活の変化により、「夫婦同氏規定」はもう時代に合わなくなっている、という主旨のようです。女性裁判官二名もこれに同調。

裁判官櫻井龍子,同鬼丸かおるは,裁判官岡部喜代子の意見に同調しています。

 

裁判官木内道祥の意見

婚姻における夫婦同氏制は憲法24条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等に違反すると解される。

(中略)

二人が婚姻という結び付きを選択するに際し,その氏を使用し続けることができないことは,その者の社会生活にとって,極めて大きな制約となる。

憲法24条に違反している。

国家賠償には当たらない、としています。

 

裁判官山浦善樹の反対意見

私は,多数意見と異なり,本件規定は憲法24条に違反し,本件規定を改廃する立法措置をとらなかった立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるべきものであるから,原判決を破棄して損害額の算定のため本件を差し戻すのが相当と考える。

憲法24条違反。

国家賠償に相当。

と、最も強い反対意見と思われます。

 

国家賠償については、賛成1:反対14。

憲法24条違反については、賛成5:反対10という構成です。この判決に最も強く反対していたのは、山浦善樹裁判官です。

 

まとめ

現在の夫婦同氏規定について、ほとんどの裁判官が合理性を認めているという点に注目したいと思います。さらに、結婚制度は当事者だけでなく、子供や第三者のことまで広範に考えて決めるべきという意見もあり、非常にまっとうな判断だと思われます。

夫婦別姓論者がよく言うような、「結婚は夫婦の問題。他人の選択に口を出すな!」という主張が的外れなものであるということを、判決が示しているのです。